経理部のリアルな描写に共感し、かねてから注目していた小説「これは経費で落ちません!経理部の森若さん」
この度、念願かない、原作者の青木祐子さんにお話を伺うことができました!
NHKでのTVドラマ化も決まり、また新しい森若さんに会えるのではと非常に楽しみです。
様々な会社の経理部を見てきたGENが、作品の魅力を経理部の実情も交えてお伝えします。
【お話を伺った方】
小説家 青木祐子さん
集英社オレンジ文庫編集部 波津恒一郎さん
【インタビュー目次】
1 はじめに TVドラマ化にあたって
2 経理部の森若さん 森若さんは、あなたの身近にも!?
3 青木祐子さんの哲学 森若さんの本質をついた名言とは
4 天天コーポレーション 堅実な経営理念に迫る
5 今後の展望について 森若さんのその後!?
「これは経費で落ちません!」 青木祐子 装画/uki 集英社オレンジ文庫刊
---------------この度は、貴重な機会をいただきありがとうございます。
7月26日からNHKでTVドラマもスタートしますし、
とても楽しみにしています。
青木さん 出演者はイメージ通りですね。
小説を受け渡した後はドラマ班の仕事なので、どう料理して
いただくか楽しみです。
波津さん そうはいっても、こうしたいけどいいですかとか、すごく丁寧に
お伺いに来られますよね。
---------------正直なところ、どちらかというと地味なイメージの経理が
よくドラマになったと思いました。(笑)
波津さん よくドラマにしてくれたな、という感じです。
タイトルが心に響いて、みんな怯えたのかな。(笑)
青木さん みんなごめんなさい、という気になったのかもしれません。(笑) 「これは経費で落ちません!」 青木祐子
装画/uki 集英社オレンジ文庫刊
--------------- 経理というと一般の方には難しいというイメージがあり、経理を分かりやすく身近に感じられるようなマンガや
小説がないかと探している中で、森若さんに出会い、これはすごい!と思いました。
青木さん 経理を前面に押し出すつもりはなくて、いるよねこういう人、というのを書きたかったんです。
森若さんは、私が会社員だった時の経理の方に似ていて、「この人何考えているんだろう?」と思ったことが
スタートです。
--------------- います!森若さん、経理部に必ず一人はいます。
経理部の様子も非常にリアルで、まさに経理部あるあるです。
青木さん 私も経費精算とか、ギリギリ頼む側でもありました。(笑)
経理部の女性がにっこり笑ってダメです、というのを書きたかったんです。
--------------- 経理部としては、締日は死守すべきというのはありますが、実際は受けてしまった方が楽というのもあり、
そのあたりの葛藤も非常にうまく描かれていると思います。
青木さん やったほうが楽だけど、2回目も絶対ありますもんね、1回許すと次も甘えられるので。
変な小さい闘いが、経理には日々ありますね。
ー経理部のステレオタイプ、森若さんはあなたの身近にもきっといるはずです。
--------------- 著書はどういう方に読んでもらいたいですか。
青木さん 派手な仕事でもなくて、お給料分がんばって働いている女性に読んでもらいたいです。
ライトな小説なので、深く考えず会社帰りに電車でぱっと読める感じにしています。
--------------- 確かにぱっと読めますが、その中に非常に奥深い心理描写があり、読めば読むほど味が出るんです!
青木さん 軽くささっと読んでる人もいるけど、軽い中に、私の会社員の時の哲学を一生懸命入れてます。
読者の方からも、そういう感想を頂くこともありますね。
--------------- まさに哲学です!学ぶべきものがたくさんあります。
弊社社内ミーティングでも、森若さんの名言を引用したりして社員教育にも活かしています。
青木さん 私も会社員時代は完璧ではなかったですけどね。(笑)
--------------- 森若さんはいつも、それぞれの立場や権限を意識していますね。
青木さん 意識していますね。
営業も経理部も、それぞれ権限や立場があって、でも最終的に会社を良くしようというのは皆一緒、
そういうことを意識して書いています。
--------------- 「それは経理の仕事でしょ」とか、営業と経理の間に溝があったりします。
青木さん 自分の与えられたことを完璧にすることが一番ですね。
経理に向き不向きはありますか?
--------------- 小説に出てくる経理部の真夕ちゃんが、まさにです!
森若さんが真夕ちゃんに対して言及する台詞に、非常に感銘を受けました。
『ミスに気づいたらごまかしたり抱え込んだりせず、すぐに報告する 。
正直さ、率直さというのは案外貴重な美質かもしれない 』
青木さん 天才でも優秀でもないけど、責任をもってやっている人が認められたらいい、と思って書いています。
ー森若さんの真夕ちゃんに対する台詞。まさにGENが理想とする人物像です。
--------------- 「天天コーポレーション」(森若さんの勤める会社)というネーミング素敵ですね!
最初に、組織図などもつくられるのでしょうか。
青木さん 組織図は、作っていなかったですが、九州でできて、こうやって拡げて東京に進出したとか、
そういう設定を考えるのが好きなんです。(笑)
--------------- 天天コーポレーションは地味で堅実な感じですね。
青木さん 最初のモデルがバスクリンなんですよ。(※前作「風呂ソムリエ 天天コーポレーション入浴剤開発室」の取材元)
そこから始まって、四季報や経済情報誌を読んだり、オフィス街に行ったりしてイメージを固めていきました。
書きながら、派手でなくてもすばらしい中小企業メーカーがたくさんあるということに改めて気づかされています。
--------------- (天天コーポレーションは)上場はしているのでしょうか。
青木さん 上場してますね、同族(企業)だけど。
55%は身内が保有している感じです。
--------------- 円城一族ですね。
青木さん 今日発売の6巻でM&Aが出てきます。
M&Aといっても、末端の社員の場合「うちの会社M&Aかけられてる」というより、
まずは会社ではなく、「私はどうなる」ということを考えると思うんですよ。
(6巻は)会社としての分岐点ですね。
--------------- M&A、非常に気になります!
吸収される方なのでしょうか。
青木さん そうですね。(笑)
---------------そうなると天天コーポレーションの経理部も!?
波津さん そこはぜひ6巻を読んでいただければと、、(笑)
一応、M&Aがひと段落するまでは(6巻で)いきますね。
ー天天コーポレーション、元の社名は「天天石鹸」。
中堅どころのメーカーで、創業以来の売りは石鹸。
ー温泉旅館に石鹸を買ってもらって成長したということで、今でも小口の顧客を大切にしている。
地方の小さな温泉旅館がいまだに「天天石鹸」と書いた古い椅子を使っていたりする。
それが創業者一族の自慢である。
---------------「森若さんシリーズ」と青木さんの今後の展望について教えていただければと思います。
青木さん 森若さんはまだ続きます、あと数巻くらい。
他にも、ライト文芸や一般小説を書いていきたいですね。
---------------まったく別のジャンルということもありますか?
青木さん やっぱりOLさんがテーマのものを書いてほしいという要望が多いですが、
森若さんの世界をもっと広げて書いても面白いかなと思っています。
---------------小説家の方は、スケジュール管理も大変そうですね。
やはり締切もありますよね。
波津さん 今回6巻は、ドラマ化に合わせて締切を1か月早めてもらったんですが、
それでも青木先生は余裕を持って出してくださいましたね。
青木さん 森若さんは早いんですよ。(笑)
シリーズになるとキャラクターが決まってくるので早いです。
---------------さすがです!
小説を書くのは、マニュアルがあってやるという仕事ではなく、新しいものを創造する仕事なので
やりがいはあると思いますが大変そうですね。
青木さん 小説を書くのは本当に面白いんです。
やりがいは、読者に面白いと言われることですね。
評価がないとほんとに凹みますが。(笑)
ー青木さんの小説を書くのが好き、という気持ちが強く伝わってきました。
人間味あふれる登場人物にも青木さんの愛情を感じました!
Page Top