経理お役立ち情報2021.01.12
普段私が日常的に関わる「税務(税金)」というと、源泉税・住民税の納付や収入印紙購入、法人税等の中間納付や決算時の納付などで、仕訳処理の際もよく目にします。
しかし、詳しく知っているかと言われると、税金の種類も多く頻繁に税法の改正なども行われることもあり、難しいイメージで敬遠しがちです。
そこで、今回は税務について基本的なことをご紹介したいと思います。
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【目次】
1.税金の種類について
2.税金は損益計算書のどこに記載されているのか
3.法人三税(法人税、住民税、事業税)について
4.「法定実効税率」について
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1.税金の種類について
税金にはどういった種類があるのでしょうか。
税金には、課税主体が国である「国税」と、地方公共団体である「地方税」があります。
詳細については国税・地方税の税目を見てみましょう。
「税の種類に関する資料 国税・地方税の税目・内訳」
(出典:財務省ウェブサイト)
税にはいくつかの視点からの分類があり、国税と地方税は課税主体に着目した分類です。
また、所得課税・消費課税・資産課税等は、税負担を経済活動のどの局面に求めているかに着目した分類です。
では次に、約50種類ある税金のうち会社が納める税金を見ていきます。
まず思い浮かぶのは、法人税です。
これは利益(儲け)にかかる税金です。
他に、会社が財産を持つことによりかかる税金もあります。
固定資産税や自動車税などがそれです。
また、契約書を取り交わしたときには収入印紙を貼ることが多いですが、印紙税のように、取引をする際にかかる税金もあります。
さらには、消費税も納付しなければなりません。
2.税金は損益計算書のどこに記載されているのか
固定資産税などの財産にかかる税金や、印紙税などの取引にかかる税金は、通常、損益計算書の販管費の中の「租税公課」という科目で、会社の経費として計上されます。
これに対して、法人税、住民税、事業税の3つの税金(会社が納める税金の中核であることから「法人三税」と呼ばれています)は、「法人税等」などの科目でまとめて、基本的には損益計算書の最後から2番目、すなわち、「税引前当期純利益」の下に記載され、「当期純利益」が算定されます。
では、なぜ「法人三税」は、損益計算書の税引前当期純利益の下に記載されるのでしょうか?
それは、これらの税金の大部分は、会社の儲けである利益に法人税法が求める調整を行った「所得」にかかる税金だからです。
3.法人三税(法人税、住民税、事業税)について
①法人税
「法人税」は、個人にかかる税金でいうと所得税にあたります。
会社が1事業年度で儲けた利益に対してかかる税金で、税額は1事業年度で儲けた利益(所得金額)に一定の税率を掛けて計算します。
法人税額=会社の儲け(1事業年度の所得金額)×税率
株式会社の法人税率は、会社の資本金額によって少し異なります。
具体的には、資本金額が1億円以下か、又は、1億円超かによって税率が異なります。
平成27年度の税制改正に伴い、平成27年4月1日以後に開始する事業年度から25.5%だった法人税率は23.9%へと引き下げられ、さらに、平成28年度の税制改正で23.4%になり、段階的に法人税率が引き下げられています。
また、平成30年度以降は23.2%になっています。
②住民税
都道府県や市区町村などの地方公共団体は、国とは別に独自に行政サービスを行っています。
その費用を、その地域の住民や会社が負担するのが「住民税」です。
会社が所得に応じて国に納めるのが「法人税」だとすれば、所得に応じて地方公共団体に納めるのが「住民税」です。
住民税額=均等割+法人税割
住民税は、「均等割」と「法人税割」の2つの要素で構成されています。
「均等割」は、資本金額と従業員の人数により細かく決まっており、各都道府県及び市町村のホームページで公表されています。
一方、「法人税割」は、法人税額をベースに計算します。
法人税の税額計算のしくみについてはさきほど説明しましたが、法人税額が計算されると、自動的に、住民税の法人税割も計算できます。
③事業税
次に「事業税」について説明します。
会社が事業を行う際には、都道府県の消防・警察・道路・港湾といった行政サービスや、公共施設を利用します。
事業税は、会社にこれらのサービスの利用料を負担する税金です。
なお、事業税は都道府県に納める税金であって、市町村には納めません。
事業税=① 事業税額+② 地方法人特別税
① 事業税額=所得割(+付加価値割+資本割)
② 地方法人特別税額=所得割×税率
※所得割=会社の儲け(1事業年度の所得金額)×税率
ここでポイントは、資本金額が1億円以下の会社は「所得割」のみ納めればよく、「付加価値割」と「資本割」はかからないという点です。
(付加価値割と資本割は、まとめて「外形標準課税」と呼びます)
資本金額1億円以下の会社は、事業税においても税金が少なくてすみます。
4.「法定実効税率」について
法人の法定実効税率(法人実効税率)とは、法人三税のすべてを会社の利益に対する税率に換算し直し、合計した比率のことです。
法定実効税率= 法人税率 ×(1+地方法人税率+住民税率)+事業税率
1+事業税率
なぜこのような税率が存在するのかというと、法人三税はそれぞれ課税方法が異なるうえに、事業税については「費用に計上できる」という特徴もあることから、ただ単に税率を合計しただけでは実際の会社の所得に対する税率を求められないためです。
つまり法定実効税率は、会社の利益に対して実際にどれほどの税金を支払えばいいかを把握するための比率であるといえます。
たとえば、本店が東京都にあり、資本金額が1億円超の会社の場合だと、法定実効税率は約30%となります。
各国ごとに税率を比較する場合には、この法定実効税率によって比較します。
日本の税率は、世界的に見ても高いと言われています。
日本は良質な行政サービスを行っているので、税率が高いのもやむを得ないところはあるかもしれませんが、ここ数年、国際競争力を高めるために法人税率を引き下げる動きが出ています。
「法人税など(法人課税)に関する資料 法人実効税率の国際比較(2020年1月現在)」
(出典:財務省ウェブサイト)
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【まとめ】
・法人税には国税と地方税がある。
・法人税は各事業年度の所得金額に税率を乗じて計算する。
・日本の法定実効税率は約30%であり、国際的に比較すると高い。
いかがだったでしょうか?
法人税と一口に言っても、国税と地方税があり、納付先も異なります。
また中間納付の際も、資金繰りの状況によっては仮決算に基づいて行う場合もあります。
なかなかすべてを網羅することは難しいですが、日々の業務から月次→年次と見ていくことで、段々と大きな視点で税務を捉えることができます。
少しずつでも「税務」について興味をもち、理解を深めるために、
今後も勉強を続けていきたいと思います。
TM
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