経理お役立ち情報2021.08.16
インボイス制度導入の背景について
前回は、2023年10月1日から施行されるインボイス制度(適格請求書等保存方式)への対応についてご紹介しました。
今回はインボイス制度導入の背景についてお伝えします。
なぜインボイス制度が導入されることとなったのか?
インボイス制度導入の背景には、「軽減税率制度への対応」と「益税の抑制」があります。
① 軽減税率制度への対応
2019年10月の消費税増税にともなって軽減税率制度が導入され、8%と10%、2つの消費税率が混在するようになりました。
軽減税率制度が導入される前は税率は一律であったため、税額は簡単に算出できました。
しかし、複数税率が導入された後は、商品ごとに適用される税率、税額が分かる書類でなければ、正確な税額を確認することができなくなりました。また、商品ごとの税率、税額が記載されていない書類は、不正やミスの原因にもなり得ます。
したがって、請求書や納品書の記載内容につき、商品ごとの税率、税額を記載することの義務付けが必要となりました。
② 益税の抑制
現行の制度(2021年8月時点)では、受け取った消費税の金額が合法的に事業者の利益となるケースがあります。一般的には、この金額そのものを「益税」と呼んでいます。
事業者は、消費税の納付という観点からは「課税事業者」と「免税事業者」に大きく二分できます。受け取った消費税の納付が免除されているのが、免税事業者です。
課税事業者・免税事業者にかかわらず、事業者は売上(報酬)を受け取る際に消費税も請求できます。課税事業者はその受け取った消費税を納める義務があります。免税事業者の場合、この受け取った分はそのまま免税事業者の取り分となります。
例えば、商品を売り上げて顧客から3万円の代金と消費税3,000円を受け取ったとします。免税事業者なら、この3,000円を納付する必要はないので、免税事業者のものになります。
益税の抑制を目的として、インボイス制度においては、免税事業者が適格請求書を発行することを認めず、課税事業者が免税事業者から仕入れを行っても仕入税額控除が認められていません。
課税事業者が消費税を負担したものとして仕入税額控除を行い、免税事業者は預り消費税の納付を行わないという不均衡な状況をなくすような制度となっています。
※ 免税事業者
消費税法では、その課税期間に係る基準期間における課税売上高が1,000万円以下の事業者は、消費税の納税の義務が免除されます。
参考資料
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6501.htm
国税庁「No.6501 納税義務の免除」
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